第1回 PICMET Japan Talk Meeting

 北陸先端大の白肌です.本日は第1回目のPICMET JAPAN Talk meetingにお越し戴きまして有難うございます.今年の5月に丹羽先生からバトンを受け継ぎ,PICMET Japanの活動を進めていくことになりました.新しい取り組みとして,例年の春(5月頃)に行っているPICMET Japan meeting(Vision meetingに名称変更)に加え,PICMET Japanの新しい活動として今回のPICMET Talk Meetingを開催することができました.技術経営・イノベーション経営分野にかかわる様々な話題を共有し,建設的に課題解決や研究・開発に向けて共に進んでいける仲間をつくっていきたいという気持ちを,運営メンバーで話し合いまして,それが結実した次第です.様々な先生がたからご支援戴けましたこと,感謝申し上げます.

 PICMETは技術経営分野での世界最大規模の国際会議として,1991年に初めての会議を開催しています.知名度としてもこの分野では広がっている印象で,この分野の研究者は1度は参加しても良い会議だと考えています.8月PICMETの大会プロシーディングスによると,2015年のPICMETは663の投稿があり,ダブルブラインドの査読の後に273論文が採択されたとのことです.参加者は30カ国の学術機関,産業界,政府機関から200名を超える数でした.投稿論文は4名のアソシエイトエディターによって割振りされ,そこから167名の世界のレビュワーによって査読を受けます.その後,論文テーマに沿って43のセクションに分けられます.
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     少々過去の話になりますが,Porter et al. (2012)の研究によると,2003年から2012年までのPICMETに投稿・アクセプトされた論文の時系列的な推移から,台湾からの参加者がPICMET参加者の第2位になっていることが驚きをもって説明されています.韓国は存在感があるものの,2011年から少々参加者が減っているとのこと.また中国からの参加は多いものの,これは科学,技術,イノベーションの領域においては珍しいことではないのに対して,南アフリカやドイツ,タイ,ナイジェリア,パキスタンは参加者の伸びが強いのは興味深いとのことでした.ちなみに,人気のあるテーマとしては,グローバル課題はやや高度に発展した地域において扱われる傾向にあり,教育に関する課題は相対的に東南アジアにおいては関心が低い.市場開発はヨーロッパ諸国において強く関心がもたれている.チーム作りに関することは北アメリカの関心が高い.このように,地域によって扱うテーマが異なっているのが興味深いところです.

     今日,御発表戴くテーマについてはPICMETにおいては,この分類のいずれかに入るかと思います.(1)Information and Knowledge management,(2)Technology Roadmapping,(3)mHealth,(4)Technology Management in the Service sector,(5)R&D Management,(6)Strategic Management of Technologyです.M-Health自体は新しいコンセプトですので,まだPICMETの単体のカテゴリーには入っていませんが,関連するカテゴリとしては,Technology Management in the Service sector があります.

     例えば,ロードマッピングに関してはスライド#の論文がヒットしています.タイトルを見るだけでも実践的で,関心をもたれるのではないでしょうか.個人的には3番の論文が気になり,発表を見に行きましたが,integrationといっても別々の成果物をだすイメージで,統合という程ではなかったです.フレームワークの研究(Oliveira and Fleury 2015)では,ロードマッピングのパフォーマンスを高めるために,3つの指標を使ったとあります.使って見れば「あるある」的な現象ですが,ロードマップはマーケット,技術そしてその間に製品サービスが縦軸に来て,横軸は時間という構造になっていますが,図にもありますように,(1)情報を書き出すのが難しい,とか,レイヤーを結びつけるのが難しいとか,そもそも未来を描くのが難しいとか,実践的な課題がたくさんあります.それについて,次の図に示すようなテクニックが大事ではないかということを,ケースをもとに示したのがこの論文の特徴でした.

     サービスセクターのものは数としては5件で少ないですが,技術経営の視点でサービスを捉えるのが面白く,例えば「Explaining Health Technology Adoption: Past, Present, Future」という論文(Rahimi and Jetter 2015)は力作です.ヘスルケアのイノベーションに関する課題は技術の適用・採用にあるとし,レビュー論文として関連理論の過去,現在,未来について論じています.この論文では”adoption”と”acceptance”という言葉は,技術に関わる行動(Technology behavior)の文脈では区別できないものとして扱い,技術を採用する行動について,いわゆる社会的認知理論などをレビューしています.全31ページ,引用文献は200を超える論文なので全ては紹介できませんが,この論文の良いところは11の関連理論を説明すると同時に,基礎理論をもとにした特にヘルスケア分野での理論展開の現状や,技術の高度化とともに当該理論の評価を行っている点です.例えば,TAMは古典的で有名ですが,ヘルスケア関連で見た場合,リハビリテーション技術進歩への適用に関する評価であるとか,Teledermatologyという,遠隔での皮膚病診断についてTAMを改良して評価をしている動向を説明しています.(Rahimi and Jetter 2015, p.2481).TAMは単純であるところが強みであるものの,ヘルスケア技術に関する理論枠組みとして使うためには更なるプロセスの追加が必要と指摘しています.論文ではさらに,そのための視点も提示しています.

     戦略については,技術の戦略的経営というカテゴリで,次のようなテーマがあります.Hasenauer et al. (2015)によるテストベッド(たたき台)の研究は,産業界からのもので,pptでの投稿でした.市場とはイノベーターの耳と顧客の声が織りなす会話であるとし,ウィーンのハイテクセンター(産学連携をしてきたセンター)が如何にマーケティングテストベッドアプローチを用いてテクノロジープッシュをマネジメントしてきたかを議論しています.リードユーザーを判別した後に,最適な市場機会を検討していくというもので,適応への準備(即応能力)や抵抗,技術アクセプタンスや市場性,市場参入へのベストプラクティスがキーワードです.これを実施することで成果が得られたという報告がありました.一方,研究開発における課題抽出については,Problem findings / identificationの文脈ではなく,ツーリズムの文脈でクラスター分析の手法を応用した研究は見られるものの,本質ではありませんでした.

     既に申し上げましたが,PICMET’15では167のレビュワーによるダブル査読が原則として行われています.これまでは,比較的シンプルな査読結果の印象がありましたが,ここ最近では,採択率も落ち(40%台),特にコメントも非常に丁寧になったと言えます.この例は本当に極端ですが,Knowledge Managementで投稿したある論文に対するコメントです.自分がレビュワーをやっている経験からも,なかなかマイナー修正で返すことは無く,メジャー修正はさほど気にしないのですが,それでも極めて丁寧な査読だったことに驚きと感謝を憶えました.このような大量のコメントに,一対一対応の修正をしなければならず,本人も苦労しましたが,投稿論文前のハイレベルな訓練として,この学会は有効であることを物語っています.こうした国際会議はそんなに多くは無いと思います.

     ということで,今日のトークを機に是非PICMETへのチャレンジを検討戴ければと思います.来年はハワイのホノルルにおいて,9月4−8日に行われます.場所はWaikiki Beach Marriott Resort & Spaです.重要な締め切りはこうなっています.

    • November 15, 2015: Submission of abstracts
    • Jan 31, 2016: Submission of the full papers for review process
    • March 31, 2016: Submission of the finalized papers along with a list of the modifications made
    • April 15, 2016: Submission of the copyright forms
    • April 15, 2016: Registration of at least one of the authors of each paper

     以上です.御清聴ありがとうございました.


    参考文献
    1. Porter, A. L., D. J. Schoeneck and T. R. Anderson (2012), "PICMET empirically: Tracking 14 Management of Technology topics," in Technology Management for Emerging Technologies (PICMET), 2012 Proceedings of PICMET '12:, 85-92.
    2. Oliveira, Maicon G. and André Leme Fleury (2015), "A Framework for Improving the Roadmapping Performance," in Management of The Technology Age (PICMET), 2015 Proceedings of PICMET '15:, 2255-63.
    3. Rahimi, Noshad and Antonie Jetter (2015), "Explaining Health Technology Adoption: Past, Present, Future," in Management of The Technology Age (PICMET), 2015 Proceedings of PICMET '15:, 2465-95.
    4. Hasenauer, Rainer, Charles Weber, Peter Filo and Jozef Orgonáš (2015), "Managing Technology Push through Marketing Testbeds: The Case of the Hi Tech Center in Vienna, Austria," in Management of The Technology Age (PICMET), 2015 Proceedings of PICMET '15:, 99-126.
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